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473: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:19
あ、入れ違いで終わりましたね。すいません。
今回は自分のことを書きます。

--
数年前、今頃の季節だったと思いますが、研修で、
港区の、とあるビジネスホテルに泊まりました。



2度目の東京出張で、手の抜きどころがわかって
きていましたので、私の頭の中は研修どころでは
なく、研修時間終了後どうやって東京見物するか
の計画ばかり立てていました。

初回の出張では、会社の出張でよく利用していると
いうだけの理由で、ちょっと小奇麗なところに泊まった
のですが、
2度目は横着になり、出張費を浮かせようと、
ランクを落とした所に宿をとりました。

まぁ、田舎の会社なんで、東京に研修、となると、
手当ても何もかも込みでどんぶり勘定で予算渡されて
いたわけです。

携帯あるし連絡取れればどこ泊まってもいいでしょ、
程度の気持ちには、なりますよね。


474: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:20
それでも一応、会社の金をくすねているような、
罪悪感はありましたので、そう大きく場所を変えるという
わけにはいかない、元の宿の近辺で、どこか探そうと
思っていました。T駅に降りた後、歩いて安そうな宿を探して、
見つけたら、あらかじめとった宿のほうをキャンセルしよう
と思ったわけです。

T駅のコインロッカーに荷物を入れて、とぼとぼと、
なんとなく勝手のわかる方角へ歩き出しました。

貴重品に、ポケット地図と傘とデジカメだけ持って、
ぶらぶら歩いてみますが、宿など簡単には見つかりません。
坂道を上っていくとだんだん町並みが静かになっていき、
領事館や私立高校が並ぶ、ちょっと陰気な感じの通りに
なりました。

そのうち、小雨も降ってきました。



476: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:22
道を記憶するためのメモ代わりに持ってきた
デジカメでしたが、傘をさしてしまうと、
地図とデジカメの両方を持てないことに
気が付き、自分のバカさに鬱々となりながら、
こんなところで降ってきた雨に八つ当たりしたい気分でした。

なかなか、それらしいものが見つからないので、
この丘(?)を反対側に下りて、回って帰って、
それで見つからなかったらあきらめよう、と、
とぼとぼ歩いていたとき、

白塗りの木に「**ゆかりの…」
(はっきり書くと場所が完全に特定できてしまうんで
これも伏せます)
とかなんとか書いてある、寺への入り口の碑を見つけました。

こういう、疲れていて冷たい小雨に降られているとき、
もう何でもいいや、となしまう心理状態というのは、
わかっていただける方もいらっしゃると思います。
私はその碑の建っている角を曲がりました。

奥はすぐ舗装が途切れ、藪になっていました。

かろうじて、人が通れるようには階段が拵えてありました。
階段を下りていくと、多少開けたところに出て、
そこはもちろん墓地になっていました。



477: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:25
あ、研修というのは、社内のではなくて、
いろんなところが開いているエデュケーションシステム(?)
みたいなもので、社内で私一人が行くような感じです。念のため。


478: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:26
いやだなぁ、と思って、それでも階段を下りていきながら、
気づきました。
そこは、前回宿泊したホテルの真裏にあたるところだったのです。
建物の裏手からも、おおきな看板が見えました。
私が下りている道は、目でたどっていくと、
そのさきは、ちゃんと大通りに出る道につながるように
なっています。

正直、ホっとしました。
旅先で、そのまま、自分がどんどん非日常みたいな空間に
入って行ってしまうのが、内心ちょっと怖かったのです。


479: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:27
そこでそのまま、同じホテルに泊まればよかったのですが、
安心して、階段の途中からあたりをキョロキョロしていると、
「ちょっと暗い感じの、安普請の、ビジネスホテル」
というのが、その場所から見つかったのです。

暗い感じ、というか、妙に生活感のある感じが、するんです。
外から見て、個室の、窓と窓の間が、
十分広くないような感じです。
言い方悪いのですが、連れ込み宿を無理やり
ビジネスホテルにしたような、
といったらいいでしょうか。

ちょっと悩みましたが、どうせ3,4日の出張、
寝るだけの場所だ、という割り切りが先に来ました。

表に回ると、そんなに変でもないようでした。
ホテルの名前を覚えて、そのまま、T駅まで戻って、
安いほうの宿を取り(部屋が取れないことはないだろう
とは思ってました)、決めていた宿をキャンセルし、
荷物を持って宿まで歩きました。われながら、ひどい客です。


480: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:28
宿は、5階の、いちばん奥の部屋をあてがわれました。
先には防火扉があり、裏に出る非常階段が
つながっています。外から見るより宿の中はあたたかで
(雨降っていたのだから当然ですが)した。
その部屋から、寺の方向が見えるわけですが、
快適な部屋の中から、先ほど自分が歩いていた場所を
眺めると、なんと自分はくだらない探検ごっこをしていた
のだなぁ、と、自嘲的な気分になりました。

研修は、なんということはなく過ぎました。

私の東京見物も、さしたる問題も発生せず、過ぎて
いきました。まぁ初日から、秋葉原やらなにやらで
ブツを衝動買いし、宿の暖かい部屋で開封して
テーブルの上に並べたりしてたわけです。


481: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:30
部屋は本当にケチが付くようなところではなく、
こういう部屋にありがちな、
何か出そう、視線を感じる、みたいなことは、
ありませんでした。

そういうのがわかるのであれば
そもそも怪しいホテルには泊まらないわけですが。

研修は最終日が金曜でしたので、土曜日一日は、
遊んで帰るつもりでした。


482: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:31
金曜(その日も雨にたたられました)の研修から戻り、
身支度だけはしておこうと思い、
テーブルの上に並べたがらくたを片付けはじめました。

こりゃ買いすぎだな、宅急便で送らないと一人で持てないな、
そういうことをとりとめなく考えていましたが、
ふっと気づいたのです。

この部屋のテーブル、ちょっと長いような気がするのです。


483: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:32
ビジネスホテルのテーブルというのは、
簡単な書き物をするためのものですが、
だいたい、スペース節約のため、引き出し式に
なっています。

その部屋のテーブルも、引き出し式でした。

しかし、その引き出した状態が、
どうも、感覚的に、
手前に来すぎているような気がするのです。



484: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:33
隣に、秘密の部屋があったりして…
と、また、
子供のこわい感覚に襲われそうになりました。

隣は普通の客室のはずです。
いわくありげな、防火扉や非常口の方向では、ありません。

間に何か、秘密の空間が、あるのだろうか…?



485: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:34
ばかばかしい、と、自分で自分の考えを振り払うように、
かなり乱暴に、投げるようにして、
テーブルの天板を押し入れました。

バタン、という、威勢のいい音がするはずでした。

返ってきたのは、ドス、という、
やわらかいものにぶつかったような音です。



486: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:35
…いるんだ! やっぱり!

…この壁の中には人が埋まってるんだ!


私は、わけがわからなくなり、こんどは勢いよく、
天板を引っ張りました。

壁の向こうで、ガコン、という音がしたかと思うと、机の天板が、こんどはもっと長く、手前に80センチほど、出てきました。


487: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:37
何か、木材の留め具が外れて、「向こうのぶん」まで、
こっちにひっぱり入れてしまったようなのです。

何だ? と、私は我に帰りました。

向こうの部屋とこっちの部屋で、
テーブルの天板を共有してるってことか?

まさか。

そんなの、同時に使えないじゃないか。
コントじゃあるまいし、ばかばかしい。
最後まで引っ張ったら、向こうの部屋が丸見えじゃないか。

そんなわけない。


488: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:38
そう思って、最後、ありったけの力をこめて、
天板を引っ張り入れました。

ガリガリ、という音がして、天板の端が、こちらに、
ポトリと滑り落ちました。


489: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:39
出てきた、天板の向こうの端には、
2センチくらいのまんまるの穴が開いていて、
ビニールひもが、そこにぐるぐるに結びつけてありました。

え? と思って、思わず、
天板の入っていた穴をのぞきこみました。


491: 連休厨 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:40
穴の向こうでは、作務衣を着て、指輪をした人の手が、
おなかをさすっているのが見えました。
もう片方の手は、犬でもつなぐかのように、
しっかりと、ビニールのひもを握っていました。

声も何も出せず、私は立ち上がって、
そのまま、すべての荷物を手に持ちました。


493: 連休厨房 ◆rPiM0h0rok 02/10/15 00:42


…結論からいうと、
私は、問題なく、チェックアウトすることができました。

ですが…

向こうの部屋の物音が、そのまま、
動く気配がないのを確かめながら、
部屋を出るまで息を殺して歩き、

自分の部屋を出て、奥の非常階段まで走り、
非常口の重たいドアを開け、

つめたい霧雨で湿った非常階段5階ぶんを、
うしろから、自分以外の足音が聞こえないように
と念じながら、
つるつる滑る革靴で駆け下りて、

5階の窓からの視線を感じないように、
墓地のわきの道を走って、
フロントに回り込むまで。

これが、
いままでの私の生きてきた中で、
一番、恐ろしかった時間です。

--
以上


コメント

コメント一覧

    • 1. 紙の地図も持ってるのに
    • 2017年08月23日 12:39
    • 道順のため一々デジカメを撮るアイデアにたまげた。
      もしや無自覚の方向音痴?
    • 2. ちょいす
    • 2017年08月28日 08:20
    • これ心霊とかじゃなくて
      隣の怖そうな人をド突いてしまった話なんじゃね
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